<こひつじかい> 卒業遠足

2017年3月10日

 真っ青な空が広がる3月5日、この日はこひつじかい恒例の卒業遠足で、間もなく小学生になる子ども達を中心に、仲間と思いっきり遊ぶ一日です。目的地のフィールドアスレチック横浜つくし野へは電車と徒歩で行く電車組と自分で自転車を漕いで行く自転車組に分かれます。それぞれの組の子ども達をサポートしてくださったお兄さんお姉さんの目を通して、子ども達の様子をご紹介します。
 電車チームは、朝、まだ静かな自由が丘駅に集合しました。小学生、新一年生を中心に声かけをして綺麗に列になり、お父様お母様に行ってきますのご挨拶をして出発です。大井町線の車内は子ども達の声で賑やかで、田園都市線に乗り換えると、早く遊びたくてたまらない子ども達は「あと何駅で着く?」と、数駅ごとに先生方に聞いていました。

 溝の口から13駅、待ちに待ったつくし野駅に着くと、子ども達は「ついたー!」と喜びながら電車を降りて行きます。しかし駅を降りた目の前がアスレチックではありません。子ども達はアスレチックまでの長い道のりを、遅れないようにと小走りで、前の子を一生懸命追いかけながら到着地へと向かいます。ヘトヘトになりながら歩道橋を渡り、アスレチックが見えてくるとその瞬間、ヘトヘトだった子ども達は一気に元気になって、また始めのように走り出しました。アスレチック公園の入り口に着くと、10℃ほどの気温にも関わらず、子ども達は「暑い!」と半袖になり、みんなで縄跳びをしました。縄跳びを終えた後、ついにアスレチック公園に入ります。こんなに長い距離を移動し、縄跳びまでした後にも関わらず、「疲れた」と言う声は一つもありません。公園内のベンチに荷物を置き、いくつかのグループに分かれてアスレチックの地図を先生からいただくと、早く遊びたいとうずうずしていた子ども達は走って遊具に向かいました。遊具では、スラスラと進める子がなかなか進めない子を応援したり、進むのを手伝ったりとみんなで協力しながら、約40種類ある遊具を一つ一つクリアしていきます。

 自転車組は、電車組よりも早く、磯邊先生やお父様お母様方に見送られ早朝の田園調布駅を出発しました。今回の自転車旅には最年少となる新一年生の子が参加し、一抹の不安を感じながらの出発でしたが、しばらく彼らの様子を見ていると自転車旅に慣れてきたのか、スピードは遅いものの、めげることなくひたすらにペダルを漕いでいました。前を向いたままの会話も弾みます。この微笑ましい様子が片道20kmの中盤あたりまでは続きましたが、中盤以降、特に起伏の激しい246号線において様子が一変し、体力の消耗とともに次第に会話が減っていきました。
 常に自分との戦いです。「今どれくらい進んだ?」「あと何キロ?」といった問いが先頭を走る磯邊パパへと向けられ、返答を聞くと「えー」という落胆の声も聞こえました。スピードを落としながらも、電車組がそろそろ着くであろう、つくし野のフィールドアスレチックへと一生懸命に漕ぎ進めます。寒空であるにも関わらず、汗を纏いながら車輪を回し続ける我々は、あと一つ坂を越えれば既に電車組が待っている目的地という場所まで漕ぎ着けました。しかし“坂”と一様に表現はできても、この坂がなかなかの曲者で、この旅を締めくくるのにはふさわしい急勾配、長距離を兼ね備え、既に疲労困憊の彼らには我々の想像以上の坂に見えたことでしょう。しかし漕ぎ進める他ないので、背筋を伸ばし、立ち漕ぎに姿勢を変え、息遣いを荒くしながら顔を赤らめ、脚をひたすらに上下に動かします。さらに言えば、この日最年少の参加者の赤くした顔には涙が伝っていました。そしてやっとの思いで丘を登りきり、久しぶりにサドルから身を下ろし、電車組と合流を果たしました。

自転車組にとってはすでに体を十分過ぎるほど動かしたわけですが、ここからが卒業遠足の本番です。一足先にアスレチックで遊び始めている電車組に追いつくべく、小山にめいっぱい設置されている障害物をてきぱきとこなしてゆきました。先ほどは涙を見せていた新一年生も、様子を変えたように疲れを見せることなく、素直に楽しんでいました。
 電車組、自転車組が無事に合流し、6,7人のグループに分かれて行動していきましたが、自分の班の様子を見ていてこちらが感心したこは、大人でさえ尻込みをしてしまうようなコースでさえ、彼らは積極的に挑んでいくという姿勢です。他のお友達に負けたくない、そしてなんとしてもこのコースをクリアしてやるという気持ちが伝わってきました。その証拠として、途中でコースを止む無くリタイアして泣いている子が多く見られました。アスレチック毎にその競争心と闘争心が垣間見え、感心した場面が多くありました。ただ、こちらから催促されなくとも、お友達に対しての励ましの声が自然と出るようになってほしいとも思いました。前述した通り、心から楽しんでいる様子が伝わってきて、水の上を通り抜けるコースでは、失敗したら水に濡れてしまうというスリルから、悲鳴が常に山びこのように響いていました。そして、こちらの予想通り悲鳴をあげた上で落水する子も多く、外で見守っているこちらにも落ちる瞬間はスローモーションで見え、池に大波を作りながら、その暴れる水面に全身が隠れてゆきました。海のように変貌したその池から、見慣れた子どもが水で変色した服を纏い、まるで海藻のような様子で、依然膝までは水に隠したまま姿を表します。ここからの反応が十人十色で、水にまみれた顔をくしゃくしゃにしながら泣く子もいれば、喜んだ様子で砕氷船のようにのっしりと笑顔で歩きながら陸に上がる子、しばらくは陸に上がらす水上で過ごす子、どれも賑やかで楽しそうな様子でした。

 思う存分この稀有な小山で遊び終えると、次はバーベキューです。自分にとっても久しぶりのバーベキューでした。磯邊先生がお肉屋さんで、鶏肉・豚肉・牛肉・ウィンナーを仕入れ、ご自宅で味付けをしてご持参なさり、合計10kg以上あったお肉も、やはり動いて空腹だったのでしょう、子ども達は完食しました。非常に美味しいお肉で、自分にとっても良いバーベキューになりました。

 バーベキューを終えてからもアスレチック遊びは終わらず、ネットが張り巡らされたコースや地面を深く掘っただけの蟻地獄なるコース、様々なユニークなコースを閉園時間いっぱいまで堪能しました。ここで自転車組はみんなの前に集まり激励の言葉を浴びながら、電車組より一足先に帰路へと発ちます。行きに私達を苦しめた目の前の坂は今度は下り坂になりますが、起伏の激しい246号線は未だ健在で行き同様苦しめられ、次第に太陽は沈み、多摩川が望めるあたりでは空は完全に色を変え暗くなっていました。ハンドル中央のライトを点灯し、多摩川駅までラストスパートをかけます。目的地も迫っており、子ども達に元気は多少なりとも残っている様子でした。多摩川駅が見えると、磯邊先生やお迎えのお父様お母様が今や遅しと待ってくださっていました。往復40km超の旅を終え、磯邊先生からのアイスクリームのご褒美を頬張りながら、子ども達は家までの帰路へと再び発ちました。

 電車組は、自転車組をお見送りした後も蟻地獄でみんなで鬼ごっこをしたり、遊具で遊びました。蟻地獄では、子ども達は皆急な坂を転ばないように、けれども鬼に捕まらないようにと一生懸命駆け降りたり、駆け登ったりしていました。朝からほとんど休むことなく遊んでいるのにも関わらず、先生の帰る合図があるまで、皆元気一杯に走り回っていました。
 泥まみれになったお洋服を着替え、お家から持ってきたおやつを少し頬張ったら帰路につきます。行き同様につくしの駅までの長い道のりを皆に遅れないようにと一生懸命歩きます。疲れ切った小さい子ども達を「あとちょっと!」と新一年生や小学生達が手を引いている姿は、「ついこの間まで手を引っ張ってもらっている側だったのに成長したな」と感じられる瞬間でした。
ヘトヘトになった子ども達は、電車に乗ると皆ぐったり。けれども新一年生や小学生は座ったり寄りかかったりすることなく、解散場所の自由ヶ丘駅まできちんと立っていました。たくましいです。
 朝とは打って変わって人混みの自由ヶ丘駅を出て解散場所に着くと、子ども達は疲労困憊ながらもきちんと列を作り、背筋を正して先生方にご挨拶をして、お父様お母様のもとへ笑顔で向かって行きました。大勢の人がいる商店街という場所の為、ご挨拶はいつもとは違って小声でしたが、皆きちんと目を見てしっかりとご挨拶ができました。
 雲一つない青空の下、怪我もなく、協力しながら達成したアスレチックや、皆で頬張った美味しいバーベキューは子ども達にとって最高の思い出になったことでしょう。沢山の素敵な思い出が出来た卒業旅行でした。電車組も自転車組も、自分一人ではなく仲間がいるからこそ頑張る力が湧いたこと、そしてやりきった!という達成感に心が躍動したことを、どうぞいつまでも大切に抱いていてほしいと願っています。

磯邊季里 @ 2017年03月10日 07:40 コメント: (0)

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