<こひつじかい> チャリティコンサートと恭子先生お絵かき教室

2017年3月13日

 3月12日(日)神楽坂のア・ポワンというレストランで行われた東日本大震災復興支援チャリティコンサートに、こひつじかいの子ども達が参加しました。前日の11日はまさに東日本大震災から6年がたった日、東北地方の復興の様子などが多く報道されていました。日本人の誰もが東北地方に心を寄せ、何気ない日常のありがたさや、そこにあるささやかな幸せの尊さを改めてかみしめる契機になっていると思います。
 このコンサートに参加したこひつじかいの子ども達のうち、新一年生さんは6歳ですから、震災当時は生後間もない赤ちゃんでした。その新一年生さん達を中心に歌を介してチャリティコンサートに関わる運びとなったのは、タイ・バンコク在住の画家、阿部恭子先生とのご縁があったおかげです。恭子先生と親交のあるピアニストの田畑先生を中心に今回のコンサートが企画されました。以前、恭子先生が震災後、心に不安を抱える子ども達の為に釜石のこすもす公園に「希望の壁画」を描かれたこと、希望の壁画の一周年と希望の鐘完成記念祝賀会にこひつじかいの子ども達が東京から参加して歌を歌ったこと、その翌年の2016年にはこすもす公園を中心に開催された様々なワークショップにも子ども達が参加したことなど、東京に住んでいる私達だけではできない子ども達の心の教育を、恭子先生からいただいたご縁が授けてくださっています。今回の会場となったレストランには、恭子先生が描かれた色鮮やかで大きな絵が飾られ、あたたかで明るい雰囲気を作っていました。

 コンサートにはこすもす公園の造園、維持にご尽力されている「こすもすのお父さんお母さん」である藤井さんご夫妻が参加され、かつて祝賀会やワークショップ(東北キャンプ)参加でお世話になった子ども達にとってはとてもうれしい再会の機会となりました。震災、特に津波について描かれた絵本の読み聞かせもあり、森川さんという方がご協力くださいました。
 当日は新一年生が参加する第一部と小学生中心の第二部の二部構成でした。いずれもまず田畑先生のピアノ演奏に合わせ、森川さんが2冊の絵本を読み聞かせてくださいました。

震災で傷ついた子ども達の心の回復を願って恭子先生が描かれた「あしたがすき」と、津波から自分の命を自分で守ることを説いた指田和さんの「はしれ、上へ!津波てんでんこ」です。普段読んでいる絵本とは違い愉快なお話しではありませんし、子ども達にとっては長いお話しだったと思いますが、どの子もじっとお話に耳を傾けていました。
 こすもすのお父さんのご挨拶のあと、いよいよ子ども達の出番になりました。田畑先生がこすもす公園と希望の壁画、希望の鐘のために作曲された組曲こすもす、先述の通りこの一部を子ども達が祝賀会で歌った曲ですが、今回は歌詞ではなく「ラララ・・・」で歌うことになっていました。歌詞がないことは一見簡単なようで、メロディの変化や終わるタイミングの助けがなく、子ども達にとっては難しいようでした。チャリティコンサートへの参加が決まってからというもの、お母様方のご協力を賜りながら、お稽古場でもいつも練習してきました。その甲斐あって、本番では声もしっかり出ていて、良い姿勢を保ちやり遂げることができたと思います。田畑先生に、聴く側出演する側それぞれのコンサートでのマナーを教えていただいたことが身についたのではないでしょうか。
 時間の都合等があり、第一部では歌わなかったのですが、第二部では「ビリーブ」も歌うことができました。かつて記念式典でも歌い、こすもす公園でブランコを漕ぎながらみんなでずっと歌っていた、子ども達お気に入りの曲です。また、田畑先生にはこひつじかいの25周年を記念した「未来へ」という歌を作っていただいたいて、この曲も披露しました。

 第二部では恭子先生が準備してくださっていたワークショップを開催することができました。恭子先生が用意されたキットを利用してのポップアップカード作りです。コンサート会場には恭子先生の大きな絵が飾られていますし、ポップアップカードの見本にこすもす公園の希望の壁画のモチーフが用いられているので、参加者の多くがそれらを模してカラフルなカードを作っていました。子ども達だけではなく御父兄も一緒に参加され、皆で一緒になって楽しめたワークショップでした。

 第一部第二部とも、子ども達は良いお行儀で自分のつとめを立派に果たせたと思います。他の参加者からもその姿勢にお褒めの言葉を頂戴しました。限られたスペースに限られた時間ではありましたが、やはり東北への思いのこもった場が、良い時間を作ったのではないでしょうか。
 番外編にはなりますが、リハーサル後の短い時間を使って子ども達と神楽坂見学をしました。ほんの15分ほどの時間でしたが、神社や石畳を観察したことが、子ども達を慣れない場所や本番の緊張感から解放し、良い息抜きになったと思います。

 恭子先生からの贈り物、それは12日(日)のチャリティコンサートに参加するという経験もそうなのですが、翌日の13日(月)に広尾のお稽古場で絵画教室を開いてくださったことを意味しています。新一年生さんを中心に20人ほどの子ども達が恭子先生のご指導のもと、アクリル絵の具を使うことに初めて挑戦しました。絵のテーマはお菓子のパッケージで、さまざまなお菓子がお稽古場に並べられ、子ども達を迎えました。たくさんのお菓子を見た子ども達は大喜びです。わーい!という気持ちで、自分が描く「モデル」のお菓子を選びました。アクリル絵の具、キャンパス、筆、どれもが真新しいもので、子ども達のために用意されたものです。アクリル絵の具は普段恭子先生がお使いになっているものと同じ絵の具で、前日のチャリティコンサート会場に飾られていた大きな絵を間近に見てきたばかりの子ども達は「恭子先生と同じ絵の具で描くのだ!」というワクワクする気持ちが高まっていました。

 「小さくなってしまわないように大きく描くのよ、本物みたいによく観て描いてね!」という恭子先生の教えを頼りに制作にとりかかる子ども達。鉛筆で下書きをするところまではうまくできても、そこから先は未知の世界です。うまくいく子もいれば、思うようにいかない子もいます。あちらこちらから「恭子せんせーい!」と先生のご指導を仰ぐ声が続きます。その声のひとつひとつに応えてくださる恭子先生のアドバイスのおかげで、誰一人として途中で投げ出すことなく、全員が作品を仕上げたのでした!参加者には新年中の子もいましたが、立ち上がって歩きまわるような子はいません。良い集中力を保ち、楽しみながら、そして何よりも意欲的に、制作にとりかかっていました。お菓子のパッケージには字もあります。字などまだ習ってなどいない子ども達にとって、慣れない筆と絵の具で字を書くのはさぞ難しかったことでしょう。あまり水を使わずに描くアクリル絵の具で広い面積を塗る作業にも、子ども達は苦心していたと思います。簡単にはいかない制作をやり遂げたからこそ得られる達成感に、どの子もとても良い表情を見せていました。

 恭子先生には毎年新一年生さんがこの時期に完成させている手作りのいろはカルタも見ていただきました。文章も絵もオリジナルで作った50音のカルタの一枚一枚を、一人ずつ先生に講評していただきました。新一年生さんにとってどんなにうれしい時間だったことでしょう。
 
 前日のチャリティコンサートに引き続いてこのアトリエに参加したという意味があると思います。コンサート会場で目の当たりにした恭子先生の作品、それと同じ道具を使って自分達も制作できるという高揚感、大好きなお菓子がたくさん並べられた楽しそうな雰囲気と、仲間も一緒に取り組んでいるというお互いを高め合う空気。昨日の今日でつながる、良い雰囲気がはじめからお稽古場にはあったのです。この日の制作活動中にはどの子も自分の課題があり、それを自分の力でクリアできたことで次のステップへ進めた、その背中を押してくださったのは恭子先生でした。3月、それぞれの学年の締めくくりにふさわしい、記念に残るアトリエは「世界一受けたい授業」の一つと言えると思いました。
 子ども達がお絵描きと格闘している様子を見て回っている私に「いそべっちもやればー」と声をかける子ども達。恭子先生から頂いたこのすばらしい機会、それこそが贈り物です。先生に感謝するのと同時に、こひつじかいでもこのアトリエのような雰囲気、空気感を作っていきたいと強く思いました。

磯邊季里 @ 2017年03月13日 07:44 コメント: (0)

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